伝記ステーション   Art Bird Books

あの「夢」はどこからやって来たのだろう?

ディズニー・シーのMysteriaous island とジュール・ヴェルヌとニーチェ


東京ディズニー・シーの中心にあるミステリアス・アイランド。その名のごとくミステリアスといってもいいのではないかという話がここにはあります。ミステリアス・アイランドの海底には、「海底二万里」の著者であるサイエンス・フィクション創始者ジュール・ヴェルヌに捧げられています。ディズニー側のたっての計画でした。この島の海底には、「海底二万里」に登場する潜水艦があり誰もがネモ船長になります。行く手にどんなことが起こっても沈着冷静で冒険心に富んだネモ船長です。子供たちが見習わなくてはならないネモ船長です。
 ジュール・ヴェルヌの話になりますが、ヴェルヌは晩年、ほぼ同時代に生きたニーチェの本がフランス語訳されると早々に読んでいたそうです。晩年の『永遠のアダム』は永劫回帰がテーマになっていて、主人公の名前も”ツァラトウストラ”の名前を少し組み替えた名前で、読めばニーチェを想起させるがごとくの展開になっていました。
 面白いことにニーチェの側も、ヴェルヌの多くの作品を読んでいたようで、『ツァラトウストラはかく語りき』などには、新しいタイオウの人間、冒険心に富みインディペンデントで自由な発想と行動力、社会の慣習にしばられない人間をヴェルヌの著作からもヒントを得ていたといわれています。二人は直接会うことはありませんが、双方で以心伝心のごとき、また地下水脈で魂がつながっていたようなそんなキワドイ関係だったようです。
 ヴェルヌは出版人ヴェツェルが因襲にまみれた社会組織を根底からリニューアルさせるために新たな社会・環境未来を子供たちにかけ、子供たちのための出版を一緒になってつくりだしていきました。ディズニーシーはディズニーランドの大人ヴァージョンでもあるので、かつて子供の時に読んだワクワクするヴェルヌのSF世界を呼び起こし、疲れ果てた大人の「再生」をイメージしたのでしょうか。それはたんに癒しの空間ではなく、ニーチェが放ったように、新たな人間の出発として、自身の魂に語りかける空間といってもいいかもしれません。そのネモ船長は、新宿花園神社にも、目白の鬼子母神にも、三鷹ジブリの森近くにも出現しました。赤テントの唐十郎です。唐十郎は、ネモ船長に扮し、つねに冒険心を失わない希代の破天荒な「少年」でありつづけています。
 ディズニーシーのミステリアス・アイランド。大人になったからこそ、一度体感されるのもいいかもしれません。ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』と『ツァラトウストラはかく語りき』を手に...