伝記ステーション   Art Bird Books

あの「夢」はどこからやって来たのだろう?

ロバート・スミッソンの渦インスピレーション


やはり1970年のランドアート/アースワークの記念碑的作品「Spiral Jetty-スパイラル・ジェティ」をアップしておきます。ユタ州のグレートソルト湖に土砂をじゃぶじゃぶ入れこんで壮大な渦をつくりあげてしまったのだ。美術用語でよく用いられる「サイト」(特定の野外の場所に置かれる-サイト・スペシフィックとも)と『ノン・サイト」(美術館やギャラリーなど置ける場所ならどこにでも置ける)という言葉は、スミッソンが「Spiral Jetty」などを生み出すなかで、彼が書いた論文で提出した概念で、じつはスミッソンのアート作品が生み出される過程を知っておかないと、アースワークはてんで分からん、ということになる。美術作品と環境との関係はロバート・スミッソンが深く探求しその後、多く論じられ、多くのアーティストたちにつながっていったといっても過言でもないかもしれない。リー・フリードランダーの写真集「セントラルパーク』はまったくその延長線上にあるもので、じつはNew Yorkのあの「セントラルパーク」こそ、ロバート・スミッソンのアートがなるほどと分かる鍵になっているのだ。スミッソンはセントラルパークの設計者フレデリック・ロー・オルムステッドのこと、セントラルパークの古写真を調べあげ、「ピクチャレスク」の概念とともに人間と風景の間で絶えず変化する関係性を読みといていった。そうしてセントラルパークがアートの文脈の中で再評価されランドスケープアーキテクチャーとしての重要性を帯びていく。その上での「Spiral Jetty」の構想と実践なのだ。なにはともあれ水位が上昇すると水没してしまう「Spiral Jetty」をいま一度見てみよう。スミッソンはそれらを空中写真や地図としても制作していくが、その3年後1973年にテキサス州で作品の予定地を探している最中に飛行機が墜落し、35歳の若さで亡くなっている。その後の影響は計り知れないものがあり、インスピレーションもまったく一つや二つではおさまりそうもないのだ。