伝記ステーション   Art Bird Books

あの「夢」はどこからやって来たのだろう?

エゴン・シーレ:自画像インスピレーション


世界中で死者を出した新型インフルンザ(H1N1)であるが予防が効いているのか潜伏中なのか、またあまり話題にならなくなってきたが、100年余前の超インフルエンザ(スペイン風邪)にかかって1918年にわずか28歳で亡くなったのがエゴン・シーレだ。しかも、妊娠中だった妻エディットもシーレが逝くたった3日前に、同じくスペイン風邪に罹って亡くなっている。おそるべしスペイン風邪だ。エゴン・シーレは、若い女性たちを多く描いているが、セルフ・ポートレイトも数多く残し、それが後世に評価されるときその繊細すぎるタッチとデフォルメされた自身の肉体像とともにつねに話題になる。内面の苦悩と欲望、今、また話題の太宰治と類縁性があるセンシビリティとスピリットの持ち主だったかもしれない。シーレに女友達を紹介したクリムトは自己を表現対象にすることはなかったのだが(じつは私もそっちの口で、鏡もあまり見ることはないのだから)、自身が将来どうなっていくのか、何処へ向かって行くのかという意味での自身への関心はあっただろうが(皆さんと同じように私もそうだが)、表現として自画像に向かっていくのはどこかで意識の谷間か境界を渡らなくてはならないのだろう。面白いことにそれが「写真」だといとも簡単に「セルフ・ポートレイト」してしまうことができるのは、皆さんも経験があるとおもう。でもそれがビデオで撮るとなうとなまじっかできない。かつて映像作家で詩人でもある鈴木志郎康氏がかなり長い時間、自身を撮り続けた映像を見たが、出ている本人が苦しくなっていくのが見てとれたが、それを見ている方も苦しくなった。その苦しさを写真はいとも簡単に乗り越えてしまうなにかがある。絵画の肖像画をみてはじめてそのことが対象化してみえてくる....