伝記ステーション   Art Bird Books

あの「夢」はどこからやって来たのだろう?

オスカー・シュレンマーの人間工学による顔の造作とウルトラマン


オスカー・シュレンマーはいわずと知れた美術大学バウハウス(1919−1933)の中心人物の一人でシアターワークショップの造形主任であるが(1923年就任〜9年間担当)、もっとも有名なトリアディック・バレエでは、人体の動きや組成を徹底的に分析し、思考や感情に内在する原理から人間そのものをつかみだそうという画期的な人間工学をつくりあげていった。それは純粋の抽象化の否定で、「人間性を残した抽象化」と言われた。そして、球体・立方体・円錐の3つの幾何学基本形が使われたコスチュームが制作され、ダンサーがまるでロボットのように踊るメカニックなダンスが誕生した。さて、そのダンサーの顔に注目してほしい。あっ! 「ウルトラマン」じゃないか。でなければ弥勒菩薩!(イラストレーター、みうらじゅん氏のウルトラマンの顔の原型は弥勒菩薩にある説もある)円谷プロの制作者たちは、オスカー・シュレンマーのこの舞台を何処かでみたのだろうか。資料からはそれはわからないが。興味深いのは、トリアディック・バレイの「トリアディック」とは「三つ組み」の意味で、「滑稽な場」「荘厳な場」「幻想的な場」とある。そのどれもがウルトラマンが登場するあのシーンから抱くイメージなのだ。円谷プロがトリアディック・バレイをみていないとなれば、ウルトラマンの顔の造作と、オスカー・シュレンマーの人間工学から誕生した顔の造作、そしてさらには、弥勒菩薩のあの涼しげな顔の表情が、同じ次元のものに、シンクロするがごとくにむかっていった、このことはかなり重要なことではないかとおもうのだ。