白神山地のブナ林:「森の母」「緑のダム』
1993年に白神山地(秋田〜青森)が早々と世界自然遺産に登録されたのでしょう。白神山地なんか知ってるわい、となんとなく思っていると、やはり全然知らないんですね。白神山地と聞いて、ブナ林の宝庫、と記憶している人はどれだけいるでしょう。私もすっかり忘れていた口ですが、ある件で調べものをしていると石ばかりで造られるようになったヨーロッパではブナ林は「森の母」と呼ばれていることに気づきました。とにかくブナの成熟種子の30%が脂肪分で有機物でいっぱいで土壌がとにかく肥沃になって、川〜海へ流れれば、むちろん魚も、そして人も大助かりとなるわけです。日本には2種のブナ、中国に4種ありますが(韓国にはウツリョウ島だけに、台湾も北部に少し)、米国には五大湖南方に1種、イラン〜トルコにかけ1種、ヨーロッパに1種だけで、ブナ林の世界の中心は東アジアになっています。南半球にはブナは存在しません。そしてブナ林は、世界の植物群落の研究者にとって「基準植生帯」になっているというのです。最近ダムがらみの報道が多いのですが、このブナ林は、「緑のダム』と呼ばれていて土砂崩れも防いでくれ、土壌に多くの水を蓄え、水瓶としても利用されるほどの貴重な存在であります。このブナ、第二次大戦中は、その硬度から戦闘機のプロペラや航空機の胴体の合板板に使われ、戦後は家具やフローリング材、そして線路の枕木、さらにはパチンコ台やテニスのラケット、そしていまでは高級家具に多く使われています。人間さまは使い放題してきたわけです。
先日、等々力渓谷を歩いてきましたが、不動尊のあたりはとくに素晴らしく、すごいのは等々力不動神社が建つ崖の中腹から営々と清水が吹き出していることです。いったいどこからその清水が流れてくるか水源がみあたらないわけですが、おそらく境内とその周囲の樹木とその土壌からではないかとおもいます。境内の樹木はなかなかに素晴らしい樹木ばかりでしばし見入ってしまいました。