伝記ステーション   Art Bird Books

あの「夢」はどこからやって来たのだろう?

映画や芝居が周囲にある「環境」:幼少期、コマーシャル・エージェントにはことごとく断られた


ソフィア・コッポラ監督映画の『ロスト・イン・トランスレーション(2003年公開)の中目黒での撮影シーンが真夜中から朝方にかけ、東横線沿いのストリートで猛スピードで敢行されたのはもう随分と前のことになる。私もその撮影現場を見ていたが、今はなき高架橋下のバーやクラブの妖しいネオンの光を浴びて、白磁の様な色白な妖艶な肌が際立っていたのを覚えている。当時19歳だったようだ。
この『ロスト・イン・トランスレーション』で、ゴールデン・グルーブ賞にノミネートされ、英国アカデミー賞主演女優賞などを受賞し、瞬く間にブレイクしていったことは皆さんご存知のこと。その特異なセクシーさを武器に映画界に突如あらわれたとおもいきや、それ以前から映画や舞台に登場していて、13歳の時に出演した映画を監督したロバート・レッドフォード(映画『The Horse Whisperer - モンタナの風に抱かれて』)スカーレット・ヨハンソンのことを当時、「老成した魂(オールド・ソウル)」と呼び、「30歳になろうとしている13歳」と語ったように、その後も、一緒に仕事をしたほとんどの人が実年齢よりも精神的にすごく大人びていると感じるといいます。そして演技に対する姿勢がプロフェッショナルに徹していると。
スカーレット・ヨハンソンウィキペディア情報(父はデンマーク生まれの建築家、祖父は映画脚本家・映画監督、母はユダヤ系映画製作者。そして幼い頃から演劇教室のリーストラスバーグ・シアターインスティテュート・フォー・ヤングピープルに通い、8歳の時にオフ・ブロードウェイの舞台に立つ)からも、彼女の生育「環境」や演劇的環境を感じとることもできますが、「マインド・ツリー(心の樹)」的にもう少し突っ込んでみると、そこにはウィキペデア(日本語・英語版ともに)ではあらわれない母方の「祖母」の存在がみえてきます。『スカーレット・ヨハンソン-彼女が愛される理由』(ブランドン・ハースト著 P-Vine Books)で語られているのは、小さかった頃から祖母ドロシーと一緒に過ごすことが多く、少女の頃も「親友は誰?」という質問にも、「おばあちゃん!」と答えているほどのお婆ちゃん子でした。このお婆ちゃんドロシーが、女学生時代に学校のステージに立って演技をするのが大好きだった人で(スカーレットの母もこの祖母の強い影響圏にあった)、2008年にスカーレット・ヨハンソンが歌手デビューする程、歌が大好きだったのも、その源流もまたこの祖母ドロシーにあったようです。親族が集まる席では、祖母はガーシュインの「サマータイム」などを熱唱する口だったようです。
スカーレット・ヨハンソン 彼女が愛される理由 (P-Vine Books)


父は建築家で母は映画製作者とはいってもスカーレットが幼少時、ヨハンソン家はずっと経済的な苦労がつづいていたようですが、映画に関してはまだ物心がつかないうちから子供たちに映画を一緒に見せていました。スカーレットが「女優」になる、と子供心に決めたのはたった3歳の時で、しょっちゅう鏡の前でポーズをとってみたり、女優の真似事をしたり、舞台『アニー』のオーディションを受ける!と自ら母に言い出したりしていました。母が映画製作者(仕事の詳細は今のところ分からないが)だからといって、コマーシャルのエージェントに会いに、他の兄姉を連れていくと決まって兄にしか声がかからず(兄は演技には関心なし)、挫折の連続だったといいます。すでに当時からハスキーな声だったため、それが禍いしていたのです(後に、それが強烈な個性として強みになる)。女王様タイプで意志が強く、強気の性格だったので、すげなく断られると突然泣き出しオフィスを飛び出すこともよくあったようです。娘の精神的ダメージを心配し、母は諦めるようにすすめたほどだったといいます。
さあ、それからスカーレットはどのようにして「女優」の道にすすむことになったのか。ターニング・ポイントの一つは、母がまだ7歳の娘に猟奇的な映画『羊たちの沈黙』を見せて娘の反応を見たことでした。母は、その映画に登場するジョディ・フォスターを娘に見せたかったのでした。13歳の時、両親は離婚しますが、スカーレットは前向きにその時期を乗り越えていくのです。「よく皆に、お気の毒なんて言われるけど、全然お気の毒なんかじゃない」と、そうした経験も含めていまの自分があるとスカーレットは考えると語っています。
その後、スカーレット(この名前はよく知られているように『風とともに去りぬ』のスカーレット・オハラからきているようだ)にどんな風が吹いてきたのか、その風にどうのっていったのか、興味のある方は、『スカーレット・ヨハンソン-彼女が愛される理由』(ブランドン・ハースト著 P-Vine Books 2008年刊)をぜひ読んでみてください。

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スカーレット・ヨハンソン 彼女が愛される理由 (P-Vine Books)
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